刑事司法にかかわる権利の実現は、国が行うしかありません。然し、被害回復への支援は、地方から始めることが重要です。
児童虐待、夫や恋人などの親密な間柄からの暴力、ストーカー行為の規制など、被害者へのアプローチがはじまりました。
被害者支援には、経済的支援と精神的支援が必要です。シェルターへの補助、弁護士費用、被害者の医療補償、生活補償、被害者を支援するために、都道府県で、支援基金を設立する必要があります。
犯罪被害者療養費等支援基金渋谷案を考えました。
埼玉県で年間いくら予算が必要か、概算で見積もろうとしました。被害者の実態統計がないのです。加害者の罪状別の統計はあります。
(この統計は、埼玉県警被害者相談センターが示した数字をメモしたものです。警察情報の情報公開が進んでいないため、本来なら公表べき数値ですが公表されていないのです。)
罪状 |
平成10 |
平成11 |
殺人 |
35(女15・男20) |
36(女18) |
強盗殺人 |
5(女1・男4) |
4(女2) |
えい児殺人 |
1(男1) |
0 |
自殺関与同意殺 |
1(男1) |
0 |
傷害致死 |
10(女0) |
6(女2) |
傷害 |
1112(女195) |
1000(女178) |
|
重傷 1ヵ月以上84(女12) |
重傷 1か月以上67(女12) |
|
軽傷1か月未満1018(女183) |
軽傷 1か月未満927(女164) |
殺人未遂 |
重傷18(女10) |
重傷14(女6) |
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軽傷15(女5) |
軽傷15(女5) |
強盗傷人 |
重傷10(女0) |
重傷7(女2) |
|
軽傷172(32) |
軽傷15(女5) |
強盗殺人 |
重傷2(女1) |
0 |
|
軽傷2(女0) |
0 |
放火殺人 |
0 |
1(男) |
放火 |
軽傷1(女1) |
0 |
レイプ致傷 |
重傷0 |
重傷2 |
|
軽傷26 |
軽傷27 |
死亡者 |
52 人 |
47 人(女24人) |
重傷者( 1か月以上) |
114 人 |
90 人 |
軽傷者( 1か月未満) |
1233 人 |
1144 人 |
(統計では、傷害は、軽傷を1ヵ月未満、重傷を1ヵ月以上の2分類です。
1ヵ月以上の重傷者を、12ヶ月の治療を要したものとして、計算し、医療保険の自己負担分、移送費、医療保険適応外の医療費を基金で支援することにして、1ヵ月限度額を30万円として計算します。
死亡の方には50万円の葬儀費と搬送費5万円の支給として計算します)
◎平成10年度に支給したと仮定して概算の見積もり
犯罪被害者 療養費等支援金
死亡 52人 55万円×52=2860万円
重傷 114人 30万円×12ヶ月×114人=4億1040万円
軽傷 1233人 30万円×1ヶ月×1233人=3億6990万円
支給金額合計 8億890万円
◎平成11年度に支給したと仮定して概算の見積もり
犯罪被害者 療養費等支援金
死亡 47人 55万円×47人=2585万円
重傷 90人 30万円×12ヶ月×90人=3億2400万円
軽傷 1144人 30万円×1ヶ月×1144人=3億4320万円
支給金合計 6億9305万円
療養費を限度額一杯で計算していますが、実際には、こんな高額にはなりません。
被害者に所得がある人でなおかつ、労災や社会保険で 賃金の一定額を保障されることのない国民健康保険の被保険者の場合、生活費支援金は必要です。
(1)被害者の実体調査を都道府県別、市町村別、各警察署別の犯罪統計が未公表であるために行政が実態を知らないことについて罪状別の数値ですから、被害者の実態はみえてきません。被害の実態、症状固定までの期間といった犯罪被害後の数値を警察にフォローを求める必要があります。
各地域にどのくらいの犯罪被害が発生しているか、公表してほしいのです。
(2)医療費の捉え方
医療保険の対象です。国民皆保険ですから、医療費は保険制度を通じて支払うことになります。医療の薬価点数法で犯罪被害者の医療費を計算します。
被害者が医療保険を利用することを認め、、第3者行為なので、保険者が加害者に代位請求する形をとっています。各保険者が、加害者に賠償請求を行使しているのかは わかりません。が、保険者も被害者と同様に、加害者から賠償されてはないと考えます。被害者の加入している社会保険や国民健康保険、共済などの規模が小さく、慢性赤字のところなどでは、保険者が支払うことを拒否することになりかねません。
●生活保護法では、厚生省が一切の医療費を支払っています。
犯罪被害者もこのような医療補償法が必要であると考えますが、阪神大震災後にできた被災者支援法をでは、地方行政と国が基金の負担を分担しています。
今の財政状況より 国は、国のみで金銭給付を行う立法はしないと考えます。
●指定難病の場合は、薬価点数法で定められた医療行為のみ国、県が支払うことになっています。
この場合は、医療者が認めた場合の紙おしめ、差額ベッドは国、県が支払いますが、入院中の食費は、本人負担になります。
●犯罪被害者の療養費は、加害者が支払うものであるにもかかわらず、被害者が負担しています。
犯罪被害者の療養費は、被害者が支払うものではない、加害者の負担を国、社会が立て替え.加害者に請求するというスタンスに立つべきか、被害者が負担するのは酷なので、国、社会が支払うというスタンスに立つのか。二つの議論ができます。
社会のなかに、地方自治体、各種社会保険者、民間もいれます。
療養費支援は、生存権を保障する支出であるため、社会が支払うと主張できる論理が必要になります。
療養費等支援基金においては、個人負担分の療養費を支援する制度ですから、金額的にも医療費全額を見積もる必要がないため、取り組みやすいはずです。
基金が療養費を支払い、社会保険の高額療養費をのちに社会保険保険者に請求するかたちにすると、犯罪被害者の療養費は、本人の支払いは0円です。