5、医療情報を得ること

 

 4年前のことです。高校2年生の女の子が埼玉医大に入院中に抗がん剤の過剰投与でなくなりました。医療過誤訴訟で御両親が裁判で争っています。1週間に1度の抗がん剤を、毎日投与された結果、副作用でなくなったこと、カルテを隠蔽していたことがわかってきました。

私の入院中、薬剤師が睡眠薬・痛み止め、抗がん剤の投与など身体に薬剤が投与される前に、必ず、病室で薬剤の効果、副作用、飲用の方法を細かい説明をしました。

慶応病院においては、放射線治療を受ける前、別室で治療の受け方、後遺症についてのていねいな説明が看護師からありました。

病院が薬剤への説明を患者に行うことで、薬剤投与ミスはある程度防げることが推測できました。放射線治療を受ける前のガイダンスは、治療の進め方や副作用への対応がわかり安心できました。

患者に対して、患者の医療情報を分かりやすく説明すること、又、さまざまな治療法があること、その治療法の影響を受けるのは患者であることを医療者が説明する時、患者はも医療に対して主体的にかかわることができます。様々な治療法があるなかで、病気であっても自分の納得のできる生活を行うためには、医療情報は、提供されるべき情報です。

 

雨宮ドクターは、朝7時半頃外来診療の始まる前に、すべての患者に「どう、」と、治療の様子と不安を訴えやすいようにジョークをともないながら回診し、外来の診察や手術後の夕方から夜、「どう」ともう一度、治療への不安を訴えやすいように、入院患者を一回りしていました。1日2回は必ず担当のドクターから「どう」と様子を聞いてもらえることで安心できました。

 

医療知識をもつためにコーデュネーターがほしい。

多忙なドクターのユーモアのある誠意と看護師の心遣いに支えられての入院生活でしたが、多忙な医師が患者が理解できるようにていねいに説明をする時間をさくことは難しいことです。大船中央病院では、退院時まで病理にかかわる説明を得る機会がなく、そのことが残念でした。回診時質問はできるのですが、患者の側に医療に対する一定の知識と自分の病理に対する情報がないと、知りたいことを的確に把握できず、質問することが難しいのです。私も今でこそがん治療に対しての知識をある程度獲得しましたが、入院時、がん治療に対する知識はおぼつかないものでした。

医療にかかわる知識をえるため、又ていねいな説明を得るために、医師と患者をつなぐコーデュネーターがいれば、適切な医療を患者が受けているかどうか判断することができます。

大船中央病院は、乳がん専門の診療外科であるため、入院患者のなかで医療情報の交換ができ、医師による説明を得る機会が退院までないことの不安を解消する効果がありました。

患者の医療情報は、個人情報として開示されてはじめて、患者の生活や価値観による治療方法の選択ができ、医療過誤を未然に防ぐ手段につながるはずです。医療情報を患者と医療者が共有することで始めて患者と医療者が対等な立場になり、患者本人にとって必要な医療を求めることができ、医療過誤を防ぐシステムやコミュニケーションが進みます。医療においても、民主的であることがよいはずです。病理にかかわる情報を得て、自分のうけている医療が適切な治療だと納得できたとき、医療に対しての信頼感をもつことができます。

   
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